toyotaidの日記

林住期をタイで過ごしています。ここをベースとした旅を綴ります。

2023 古稀のバックパッカー⑰ カラコルムハイウェイでの中パ国境超え

パキスタンからの出国準備

 フンザからパキスタン側最後の町、スストに到着した。その足で、明朝出発する中国・タシュクルガン行きの国際バスのチケットを購入する。一日一便しかないから取れなければ明後日になる。幸いにも確保できた。スストにはパキスタン側のイミグレーションがあるのみで、町と言っても100メートルも歩けば家並みはない。中国からの物流を扱う事務所や中国側に向けて行く人のための店と食堂がある。商店は国境にあるためか空港の免税店のような品揃えでタバコやドライフルーツなどの地元の土産物が全面に出ている。そして冬物の衣類も扱っている。残念ながら酒は売ってなかった。近くの安ゲストハウスに宿を取り、出国の準備をする。残ったパキスタン・ルピーの換金、中国側でのSIMカード、高山病予防の投薬などやることはある。

 このタビを計画した時、年齢的に大丈夫だろうかと心配したのが、高山病だった。富士山登頂やアマゾン川からボリビアのラパス空港に到着したときに経験しているから用心に越したことはない。富士山は頭痛だけだったが、ボリビアの時は歩くことさえできなかった。今回も4700m近くになる。乗り合いバスなので途中で降りるわけにもいかないし、酸素ボンベを用意しているかわからない。出発前に友人に頼んでバンコクで薬「ダイアモックス」を購入しておいた。 

★世界一高所を通る「カラコルム・ハイウェイ

 中国のウイグル自治区カシュガルからパキスタンのアポッターバード(オサマビンラデンが暗殺された場所)までを結ぶ全長約1,300kmの世界で最も高い場所を通る道路だ。ハイウェイというが、日本の高速道路を想像するととんでもないことになる。急な崖っぷちからの転落や上からの落石事故もよくあるという。完成まで20年間。地滑りや泥流によりしばしばルートが断絶、今も修復を行っている。パキスタンと中国政府が建設したこの道路でパキスタン人労働者810人、中国人労働者200人の命を奪った。おそらく、世界でも危険な道路の一つかもしれない。

ハイウェイといってもこんな感じ。落石は頻繁にあるとか。

 土砂崩れが頻発するハイウェイでは地形まで変化し、2010 年には深刻な土砂崩れで付近の川が数か月も塞がれて、新しい湖ができた。

パキスタン出国終了

 朝九時にバス事務所に行くと、200m先の税関、出入国事務所に歩いていけと指示される。そこには、これから中国に向かう自家用車、ワゴン車、バスが並んでいた。しかし、僕たちの順番がなかなか来ない。一台ごとの単位でまず税関検査。僕らの前にイスラマバードから来た大型バスがいた。夏休みを終えて、中国に留学している学生たちで一杯。それが終わるまでは、税関の中にも入れてもらえず、外で待つ。1時間以上待っただろうか。やっと税関事務所に入れる。4人の職員が一人一人、すべてのカバンをひっくり返し検査する。僕の前のパキスタンのおじさんは絨毯を持っていたが、地面に広げ係官が四隅まで手のひらを滑らしながら確認した。そして、OKが出たカバンは、床の上に置かれ、僕たちは周囲の椅子に座らされる。麻薬犬の登場。一列に並んだカバンを嗅ぎ分けていく。僕たちのバスには中国で働くパキスタン労働者、宝石や民芸品を中国側で販売する商人、そしてパキスタンアフガニスタン旅行をした中国人の若者が乗っていたが、幸いにも全員無罪放免になった。しかし、これで終わったわけではない。隣の建物のイミグレで出国スタンプを貰わなけれならない。担当官が隣と話しながらやっている。その内停電。コンピューターが機能しない。困ったものだ。結局バスが出発したのは12時前だった。

パキスタン出国事務所

 パキスタンから陸路出国したものの、中国入国スタンプはタクシュクルガンで押されるという。その距離は200km先。陸路による国境移動でこんなに離れたのは初めてだったので不安が募る。もし中国側に入国拒否されたら、どうなるのだろう。移動の間、僕はどの国にも滞在してない。バスから出たら不法滞在。トイレ休憩や食事はどうなるのだろう。そう思っているうちにお腹が空いてきた。

 幸いにも、パキスタン側で一回ストップした。民家はないが、国立公園事務所があり、ここで用を足す。しかしこの事務所でストップしたのは国立公園を通るためその通過料兼管理料の支払いだった。持っているパスポートによって料金が違う。パキスタン人は1,000ルピー(500円)、外国人の僕は20ドル。だけど中国人は無料だった。カラコルムハイウェイ建設を中国が援助しているのはわかるが、パキスタンの領土で、自国民も払わなければならない自然保全のお金なのに中国人が無料とは??。中国とパキスタンの力関係を垣間見たような気がした。「一帯一路」の象徴とも言えるカラコルムハイウェイ。所詮、中国側に取って優位なものであることは間違いないだろう。

 パキスタン側から国境を超えるためには九十九折の坂道をローギアでバスは一気に登っていく。ヤクの群を横目に見ながら、海抜4,693メートルの峠が待ち受けている。国境に到着したのは午後1時40分。

★ 国境

 インド大陸ユーラシア大陸がぶつかった地点。南のパキスタン側の急峻な地形に比べ、中国側はなだらかなスロープに感じる。パミール高原だ。

中国側はU字谷のようになだらかになる


 
中国側が建設した大きな門をくぐる。世界一高い道路国境と周りの景観を写真に収めたいが、バスが止まることはない。窓を開けて写真を取ろうとすると、銃を構えた中国人民武装部隊の辺防部隊が大声で「窓を開けるな」とジェスチャーする。他の乗客はわかっているらしく誰も開けてなかった。ピリピリした感じが伝わる。ここで時計の時間を合わせる。中国は3時間進んでいるので4時40分(北京時間)。

中パ国境ゲート(写真は削除されずに残った1枚)

 国境から数キロいったところに大きな建物が現れる。「紅其拉甫(クンジュガンラボ)総合検査所」と書いてある。いわゆるカスタム(税関)だ。ここでも、パキスタン側の税関にいた大型バスが前に居た。順番が来てバスを降り、荷物検査を受ける。僕の担当は少し日本語ができた。荷物よりはスマホの写真を一枚一枚見る。国境の中国側で写した写真は削除される。国境ゲートの写真が一枚あったが、「これはパキスタン側」から撮影したと言ったらOKと言われる。乗客のうち一人の商人と思われるおじさんが別室に連れて行かれる。30−40分ぐらいかけてやっと開放され、バスはこれから中国国内を走る。左側通行から右側通行へ。高度はあるが、結局、高山病のような症状はなかった。薬のせいもあるかもしれないが、徐々に高度を上げ、国境で休むことなく高度を下げたことが大きな理由だろう。

第一回目の税関検査

★ 中国イミグレーション到着

 クンジュガンラボまで120km。中国側の農村、なだらかな道を走っているうちにウトウトした。午後9時前にバスはクンジュガンラボ市内にある中国側イミグレーションに到着した。途中、食事をする場所はなく、フンザでお土産に買ったアプリコットのドライフルーツを食べながら移動したが、まだ空腹だ。そして早くビールが飲みたい。宿泊先も探さなければならない。

 入国スタンプを押してもらい、本格的な中国入り。しかしその後、もう一度荷物検査があった。国境での一回目の検査と同じやり方だ。前回より厳しいのか、前に並んだ同乗者の何人かが別室に呼ばれる。「まあ、麻薬も持ってないし、荷物も少ないからすぐ済むだろう」と思っていたが、まず最初に、食べかけのアプリコットを捨てられた。そして、僕が持っていた書類を一枚一枚見ながら、係官が「待ってろ」といって、書類を別室に持っていった。

 それからが大変なことになった。担当係は英語で説明しない。僕はなんのことかわからないままに約1時間待たされ、別室行きとなった。宿探しやビールどころではない。先が思いやられる。

 この続きは次回へ。。。。