toyotaidの日記

林住期をタイで過ごしています。ここをベースとした旅を綴ります。

インド・ミヤンマー辺境への一人旅⑧ Assam INDIA (Sorry only Japanese)

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サライガット(Saraighat)鉄橋 Photo credit: Vikramjit Kakati/wikimedia

 ”東北急行”がアッサムの州都、Guwahati(グワハティ)に到着したのは、すでに日も落ちた午後8時過ぎになっていた。出発の遅れに加えてさらに1時間遅れた。冬至に近いこの時期、夕方4時半頃から陽は沈み始める。広いインドの東に位置するからデリーよりは1時間近く早くなる。予定では日没時に到着となっていたので、明るいうちに宿を探せると思っていたが、インドの時間はゴムのように伸びたり縮んだりするようだ。仕方がない。それより残念なのは、到着直前に渡る橋の上から大河Brahmaputra (ブラマプトラ川)の風景を眺めることが出来なかったこと。サライガット(Saraighat)鉄橋の上をガタゴト走る車輪の響きは長く続き、暗闇の中、大河の大きさを音で感じるしかなかった。

 ブラフマ(ヒンズーの神)のプトラ(子供)と呼ばれるブラマプトラ川。グーグルマップで見るとかなり太い線で描かれており、その川幅に驚く。雨期が終わり、乾期に入っている今は川幅も狭まっているが、ぜひこの川を見てみたい。この町で途中下車する理由の一つだった。

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Wikipediaより

 ヒマラヤ山脈の北側、チベット高原を西から東にヤルンツァンポ川として流れ、山脈東で南下する。この部分がつい最近までまでは踏査できず、わからなかった。高度3000メートルのチベットから500メートルのアッサムに一気に落下する。7000m級の山々の間をどのようにしてくぐり抜けるのだろう。(興味ある方は、日本人の冒険家、角幡唯介氏が2009~10年の二度目の探検で誰も通ったことの無かったヒマラヤの大河ヤルツアンポー峡谷グレートベンド踏破に成功、幾つもの滝も見て来た。謎の解き明かしをした彼の著書「空白の五マイル」、を是非一読を)。その後、大河は今度は西に向かう。世界屈指といわれる年間降雨量が10,000mを超えるアッサムの雨を抱え込み、ベンガル湾へと。全長2,900kmに及ぶ。まさに世界の屋根を取り囲むように集水する大河は、時として暴れるが流域の人々の生活営みを支える。神の子と呼ばれる所以だ。

 同じ方面に向かうお客と折半してオートリキシャで、宿に入ったのは午後9時を過ぎていた。まる一日の列車の旅の疲れを取るために、久しぶりの温水シャワーを浴び、ビールを飲み、「明朝は一番に川と対面するぞ」と寝床に滑り込んだ。

 翌朝、6時過ぎから川岸まで散歩する。しかし、僕はよほどついてないのか、河岸は朝靄が立ち込め、10メートル先ほどしか見えない。大きな歩道から突き出ている展望台にいる青年に聞くと、「川幅は9マイル」という。それって15キロ位になるけど、見えないから「そうか?」と相槌を打つしかない。確かに中洲にはヒンズー教寺院の島もあるし、渡し船も大きい。ガッチガッチにコンクリートで固められた川とは違うので、シーズンや場所によって生き物のように川は変化しているからそういう解釈もあるだろう、細かく問い詰めるのはやめよう。一番狭い場所に作られたサライガット鉄橋でも、約1.5キロの距離がある。「昼頃になると,モヤも晴れて、見えるようになるよ」と気楽に言ってくれるが、僕はすでに12時出発のナガランド、ディマプール行きの列車チケットを購入してしまった。

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残念。朝靄につつまれ、全く対岸が見えない

 今、住んでいるメコン川をはじめ、世界の川を見てきた。ナイル、アマゾン、セーヌ、ライン、揚子江黄河、オビ、ライン、ウヅリー、鴨緑江、ガンジス、等。まだまだ行ってない大河はたくさんあるが、旅では「川と人の関係」を見たくてなるべく水に手が触れるところまで足を伸ばしている。川は地上に降った雨を海に循環させる役割がある。水資源や生物資源、やすらぎを求めて人々が集まり、営みや文化が形成される。川は人々の交通運送の手段であった。そして時には国境となり人々を分ける。川を通して環境を考えるために30年近く日本でもNPO活動を続けてきた。僕は河川を利用するだけ利用して、自然環境を大事にしない地域や場所はいずれ仕返しを受けるとさえ思っている。それにしても、今回はこの大河の全景を見ることが出来なかったが、再度この地に足を運ぶチャンスをもらったと思えばいいと理解するようにした。

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河岸の魚市場

 河岸を歩いていると、魚市場が開かれていた。市場と言っても、船着き場の階段にちょっと手を加えたようなもの。卸業者だけでなく、近くのオバちゃんたちも家庭で調理するのだろうか、バケツやタライの中にいる川から上がったばかりの魚達をのぞき込んでいる。メコン川で見る象の鼻をしたスポットナイフフィッシュの他に見たことがあるような魚やエビ、カニ。僕の友人(高津川のお魚博士)に確認してもらったら、ローチ類(ドジョウ)、カラシン系(ピラニヤやコロソマの仲間)、キノボリウオ類、ハゼ類の魚。朝のチャイを飲みながらこの光景を見ていると、ほとんどノンベジタリアン・カレーだったのでフィッシュ・カレーが食べたくなってきた。

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市場で見かけた魚達

 アッサム。この街でもっとゆっくりしたい。なんだか後ろ髪を惹かれるような感じ。しかし目的地ナガランド・コヒマで開催されている少数民族のホーンビル・フェスティバルはすでに12月1日から始まっている。今日は12月3日。コヒマまではまだ400キロ、山道で悪路が予想される。ゆっくりやっているとフェスティバルは終わってしまう。とにかく、午後の列車に乗る前にアッサム博物館だけは見ておきたいと急ぎ足で向かった。ここで思いがけない奇跡ともいうべき幸運が始まった。(つづく)