toyotaidの日記

林住期をタイで過ごしています。ここをベースとした旅を綴ります。

2023 ウィズコロナの旅は続くよ

その⑥ バンコクから200円でカンボジア国境へ

 タイからカンボジアにへの行くには、3つの方法がある。飛行機、バス、列車。このうち飛行機は確かに早いし便利だが、高い。この歳になると時間的に余裕がある。目的地、アンコール遺跡群があるシエムリアップへは、タイ国境のポイペトを通過して陸路で入ることにした。首都・バンコクからポイペトへの距離は約250キロ。今住んでいるチェンライより近いじゃない。アランヤプラテードまでのタイ人が通常利用する長距離バスだけでなく、国境の街、ポイペトにあるカジノに向かう通称「カジノバス」、外国人バックパッカーをシエムリアップまで運ぶ国際バスとたくさんある。それぞれ価格やサービスが異なる。出発する場所と時間がわりと明確なのはバスターミナルからの通常便だが、朝早くバスに乗るためにターミナルまでタクシーなどを利用することを考えると案外、時間・経費が余分にかかる。そんな中、今回はすこしスピードが遅く、一日2便ある列車で向かうことにした。途中、バンコク市内にある多数の鉄道駅に停車するので乗り降りは便利だ。
 タイ国鉄(SRT)東線。フアランポーン駅からバーンクローンルック国境まで向かう列車の出発は朝6時。この時期はまだ少し暗い。予約もできない三等列車のみ。途中のクロンタン駅で「国境駅までいくら」と尋ねたら、「48バーツ(200円)」と言われる。「安すぎる!」。聞き間違えたのかともう一度、「カンボジアだよ」と言い直したが、価格は同じだった。アランヤプラテートまでのバスが200バーツ、外国人バックパッカーが主に使うカオサンロード出発するシエムリアップ行きバスが、1200バーツぐらいするのと比較すると確かに激安。バンコク市内で地下鉄や都市鉄道BTSを利用すればすぐ40バーツ程は必要となり、タクシーで移動すれば交通費として100バーツなんてすぐ使ってしまう。「たった200円で首都から隣の国にいける!」驚き以外のなにものでもなかった。

朝一番のクロンタン駅

 

 日本ではJR赤字路線がどんどん切り捨てられている。利用者が少なくなり便数が減る、便数が減ると不便で使えない。さらに利用客が減ると赤字になり維持できない。車を持たない地方の住民の足は奪われていく。
「SRTはこの安い料金で経営は大丈夫なのだろうか」と疑問が沸いて来る。特にこの東線に関しては、インフラの改善もされず、古い路線のまま、車両も古い。一日数便の三等列車のみの運行なので、利便性は悪いが、逆に最低限の投資で、公共交通として維持させているのだろう。朝一番の列車は、郊外に向かう下り列車にもかかわらず、学生たちや通勤客を乗せていた。途中ですれ違った市内に向かう上り列車は、通路にも乗客が立っていた。列車は沿線沿いの住民のための足。三等列車のみで、料金が安いこと。片側3人座席と2人座席が並んでいる。ちなみに並行して走るスワンナプーム空港から市内に向かう高速エアポートリンクは10倍以上の乗車賃。当然、利用者は旅行客や裕福層に限られくる。

 三等列車はバンコク市内を抜け出るとすぐに農村地帯に入る。乗客の少ない列車の旅はやはり快適。エコノミー症候群で足の血行が悪い私にとっては、時々列車内を歩き回われる。トイレを気にすることもない。チャチェンサオ駅を過ぎてからは、もう、乗降客の数もめっきり減った。時々、食べ物、飲み物をぶら下げた移動販売のおばちゃんが通路を行き来する。声をかければ良い。販売員は沢山いるから、食事の種類も多い。早朝にコーヒーを飲んで駅に向かったが、9時すぐにお腹が空き、焼き飯を20バーツで購入。量は少なかったが、小腹を満たすほどにはなる。

 私の席は最後尾車両、切り離された車両通路から後ろに見える光景は、まっすぐ続く線路だった。乾季にもかかわらず、遠く右手に雲を抱えたの山々の風景がだんだん目に入ってくる。タイ東北部と中部を分けるカオヤイの山々。線路は少し北よりにカーブしながら東のカンボジアに向かっているようだ。

線路は続くよ、どこまでも

 

 約五時間半、定刻どおりに普通列車はアランヤプラテートに近づいた。それまで静かだった車内がそわそわしてくる。私が座っていた最後尾車両にどんどん人が集まってくる。なんだろう。お互いの顔を知っているのか談笑、挨拶で賑わしい。国境に到着して、理由がわかった。最後尾が駅の出入口に一番近いので準備にかかっている。急いで降りた人たちは、そのまま国境市場に消えていった。商品買付をスムーズに終えて、バンコクに向かって帰るこの汽車に間に合わせるのだろう。私は、残念ながら寄り道ができないが、このロンクルア市場は知る人ぞ知る東南アジアでも有名な古着市場だった。


 駅から流れに沿って、私は百メートル離れたタイ・イミグレーションへ。タイ出国後、次はカンボジアのイミグレに進む。カンボジア入国はビザが必要なので、VOA(オンアライバルビザ)のコーナーに行くと、係官が手前で待ち構えている、観光ビザ30ドルと表記されているが、係官は手数料が100バーツほど追加と言う。「そんなことは無いだろう」と、わかっているが、お金を渡すとビザ申請書類の書き方を教えてくれる。記入を終えると「座ってろ」と座席に案内。パスポートを添えて事務室の中に入りにサインする上司の机に向かう。あっという間にビザが出来上がっり、手元に帰ってくる。まあ余分なサービスだけど、そんなことを制服を着る公務員が当たり前のようにやっている。足を使うサービス。そして小遣い稼ぎ。こんな動きを見せられると長年の経験から、この国も「少し要注意かな」という警告音がする。と同時に、「難しいことも金次第でなんとでもなる」という楽な気持ちも沸いて来る。

 イミグレを出たら昼12時を過ぎていた。東に向かって大通りを歩こうとしたら、通行止め。年末にカジノホテルで大火災が発生。死者20名以上の死者が出たとのこと。さて、シェムリアップまで行くにはどうしたらいいかと考える暇もなく、バイクタクシーの兄ちゃんたちに取り囲まれた。最初は英語で聞かれたが、タイ語で答えた。「マイチャンペン(必要ない)」。その方がぼられる確率が少ないと判断したから。バイクタクシーの兄ちゃんは、バス停まで40バーツに乗せていってやるというが、「バス停に連れて行かれると、すぐにはバスが出ないとか」と言われ、大変だよと外国人旅行客に聞かされていたから彼らを振り切り、歩きながら乗り合いタクシーを探す。10ドルでシエムリアップまで乗り合いタクシーがあると言われ、発車地点までバイクの後ろに乗せられる。途中、カンボジア携帯SIMと幾分のバーツをドルに両替していたら車が来た。乗客はカンボジア人二名と運転手、私は3人目の乗客となり、すぐに出発した。
これからカンボジア国内での旅が始まる。とりあえず、アンコールビールを一杯。

列車内