toyotaidの日記

林住期をタイで過ごしています。ここをベースとした旅を綴ります。

2023  ウィズコロナの旅は続くよ

その⑫ タビとカンボジア料理

 カンボジア料理と聞いて、思い出すのは、東京・代々木で40年以上店を構えるカンボジア料理店『アンコールワット』。1981年、内戦中のカンボジアから日本に亡命してきたカンボジア人夫婦が店を立ち上げた。当時少なかった東南アジア料理店の草分け的な店で、最初は庶民的な食堂という感じだった。東京に上京した際にはNGO関係者、おもにカンボジア難民キャンプを支援している人たちと数回訪れたことを思い出す。当時は珍しかったタイのシンハービールを飲めた。アルコール度が高く美味しかった。しかし、そこで食べたカンボジア料理はこれだというイメージは残念ながら思い出さない。タイ料理よりはすこし甘めだが、麺類やナンプラーベースのタイ料理と似たような味だったせいもあるだろう。

 「旅の楽しみは、なにはともあれ食事」と多くの人が言っている。非日常的な食を求めて時間とお金を使うのも納得できる。「有名店は並んでも入る」という友人もいた。観光紹介テレビ番組ではグルメ店や土産物のコーナーが定番となり、有名芸能人が美味しそうに食べ、華麗なコメントをする。確かにガイドブックで美味しそうな店を探して行くのもタビの醍醐味かもしれないが、あまり気合が入りすぎると、時々期待外れがある。一緒に旅をする仲間から「行く店はここしかない」と言われると、少し引き気味になる。思った通りの優良店であればよいが、満員で入れない、料理が遅い、サービスが悪いなど、不満が出始めることも多々ある。人気店だから仕方がないかも知れないが、旅の思い出やせっかくの料理が不味くなる。有名店というのはそれだけ宣伝広告費を使っているので有名なのであり、名も知れず、ひっそりとした良い店もある。
 すこし時間に余裕がある旅になるが、ガイド情報に頼らず、自分で探すのも面白い。ひょいと入った案外地味な店に美味しいものがあったりする。30年前に、「〇〇の歩き方」の旅のグルメ・タイ編の取材協力をしたことがある。地元で知っている北タイ料理店をいくつか案内した。結局、少し大きなきれいなお店が紹介されたが、地元の人が美味しいと言ってる店は掲載されなかった。「場合によっては観光客が押し寄せて、迷惑になったり、味が変わったりするからね」という配慮があると取材者から聞いた。やはり美味しい店は自分で探す方が良さそうだ。

パブ・ストリート

 シェムリアップには、「パブ・ストリート」という外国人観光客を対象とした通りがある。この街に到着した日、ゲストハウスで「夕食はどこがいい」と尋ねたら、さっそくここが答えとして返ってきた。ビール好きにとっては、英国のパブを連想するので、カンボジアビールでも呑もうかと早速足を伸ばしてみる。オールドマーケット寄りにある通りで、ウェスタンスタイルのパブやレストランが軒を並べている。夜は特にシェムリアップの中でも最も賑やかになるエリアの一つらしい。東南アジアの多くの場所で似たようなところが多い。西洋のデザイナーが仕掛けている街づくりかも知れない。バンコクのパッポン通りなどに比べると、食べ物やなどが中心になっているので健全的に感じるが、この年齢になる私に取っては音と光がどうも強すぎる。ストリートにそってオープンテラス席が多く、ゆっくりちびちび飲もうとする雰囲気ではない。若い時、多くの友人と来れば、楽しめただろうが、もう一つ乗り気にならない。昼、幻想的なアンコール遺跡群で見た光景に比べると対称的で、心の切り替えが上手くできない。

クメール・グリル


 パブストリートから川を超え、地元客もいる反対側に足を伸ばして見たら、落ち着いた洒落た店が通りに面してあった。名前は「クメール・グリル」。西洋風の小綺麗でオープンな雰囲気、メニューはカンボジア料理をベースにアレンジされている。ちいさなテーブルが空いていたので、「座れるか」と聞くと、チーフと見られる男が「一人かい?ガールフレンドはどこに?」とユーモラスなセリフで聞き返してくる。「君にガールフレンドがいれば紹介してよ」と言うと、「次の機会にね」と会話を交わす。一気に雰囲気が和み、メニューを見せてくれる。どれが「カンボジア料理だい?」と質問すると「どれもだよ」。その中で、彼は「ロックラック」を推奨、「食べてみろ」という。

 「ロックラック(牛肉のサイコロステーキ)」は、植民地時代において、欧米人向けに多く使われ一般的になった牛肉を魚醤と砂糖、トマトベースのソースで味付けしたもの。小洒落たプレートで運ばれてきた。「アンコール」生ビールにとっても合う。一緒に頼んだマンゴーサラダ(タイのソムタムに近い味)の酸味とも会う。思わず、ビールをもう一杯。この店も西洋人のカップル、家族連れ、韓国人のグループが訪れていたが、味とサービスで勝負という店なので、変な酔っぱらいもいないし、お客のテーブルマナーも良い。昼間はわりとラフな格好で街を歩いている西洋の若者たちも、ディナータイムに来るような客はそれなりのおめかししている。ビール2杯飲んで、ゆっくり食べて、お腹も一杯。合計9ドル。チップ制度がないこの国でも、お釣りの1ドルを気持ちよく渡すことができた。

カンボジア料理・ロックラック

 カンボジアは、独自の通貨、「リエル」を持っているが、USドルも同じようにどこでも使える。なぜこんなことが起きているのか。リエルに信用がないから?おそらく過去にリエルを禁止したポルポル政権の影響が残っているのだろう。ドル経済がこんなに動いていれば、政府が独自の金融政策を打ち出すこともできず、独立国家かと心配してしまう。まあ、そのうち、中国通貨が幅を効かせる時代が来るかもしれない。いずれにしても、わかりやすいドル現金、外国人観光客は計算しなくても高いか安いか即座にわかるので便利だろう。

 しかし、一つ困ったことがある。最低通貨が1ドル紙幣で、コインは使えない。つまり、1ドル以下の端数がでた場合、お釣りは、リエルで帰ってくる。リエルとドルの換算レートは常に変動しているが、店では細かいことは言わない。大体、1$=4000Rで計算する。缶ビール(小)をお店で買って1$札を渡すと2000Rが帰ってくる。つまり、ビールは0.5ドルという計算になる。実際は1500Rしか変えてこなかったので、0.6から0.7ドルなのだろう。最初は、お釣りのリエルがドンドン溜まっていき、どうなるかと思ったが、徐々に使えるようになった。というか、ドルだけで対応していると、貧乏人気質の日本人の私は円安も影響して、どうもぼられている感覚がする。初日、屋台で麺類を食べた。おそらく1ドルぐらいだと思っていたが、2ドルと言われた。おそらく価格は1ドルよりは高いだけど、面倒くさいから、英語のできない店主は1の次は2なのでそう答えたのだろう。同じ麺類のタイの物価を知っているから、「2ドルは高いだろう」と思うが、支払わなければならない。
 初日の経験をもとに、二日目から、「リエルでいくら?」と聞くようにした。昼は、鍋にある2種類のおかずを、白米の上に乗せる「ぶっかけご飯」。庶民の食堂なので、一杯5000Rだった。財布に溜まったリエル札で支払い。やはり1ドル強の価格が住民の外食なのだろうと判ってきた。
 そういえばラオスでもこんな経験をした。ラオスは独自の通貨はキップだが、隣のタイの通貨が使える。ただし、タイのコインは使えず紙幣のみ。最低単位が20バーツ。バーツ支払いをすると20、40、60バーツという風に価格が上がっていく。もともとラオスの食堂はタイに比べて高い気がするが、バーツ支払いだともっと高いような感覚になる。だから、キップで支払うようにしたことを思い出す。

 どうも市場で2つの通貨が流通しているのは、「高額決済を他国の通貨でして、日常生活で使う少額決済は自国通貨で」という住民の利便性を考慮しているのだろうか。それにしても現地通貨は桁数が大きく、慣れるまでは面倒くさい。スマホ決済だとどっちの通貨を使うのだろう?

 さて、朝6時、通りには朝食用の屋台がでる。「ヌンパン」、ベトナム語ではバインミーラオス語ではカオチー。そうサンドイッチ。インドシナベトナムラオスカンボジアはフランスの植民地だったことを示す食文化。バケットを見事なまでにアジアンテイスト化させた。残念ながら、私が住んでいるタイやマレーシアでは見ることができない。バゲットにパテや野菜を挟んだ私の大好物。カンボジアバゲットの特徴は、ベトナムラオスよりパンが軽く、少し小型で、噛りやすい。ここのは、青パパイヤが入っており、コーヒーを飲みながら食べると美味しかった。価格は2500R。

早朝 ヌンパンを売る屋台