4月22日 中国国境へ・開発のメリット
ファイサーイのゲストハウスに一泊。昨日のうちに国境にある旅行エージェントで「10時発昆明行バスチケット」を予約していたが、朝8時に「昆明行きのバスは満杯で、景洪行きのバスに乗車し、乗り換えで昆明に行ってくれ」と電話連絡が入った。ネットによるチケット購入システムはない。紙ベースでバスの席を埋めていく方法なので、よそで販売した場合、ダブルブッキングが出る。
「いい加減だな」。愚痴が出たが、一日1便しかないので、もう一泊ここに滞在するつもりはない。急いでバス停に向かう。9時過ぎ、すでに景洪行きバスは出ていた。「次のバスがすぐ来るから」とバス停職員がチケットを渡すが本当だろうか。バスを待っているうちに当初予定していた昆明行のバスがターミナルに入ってくる。停止する様子がない。急いでバッグを抱え、バスに駆け寄り、ストップしてもらい「昆明に行きたい」ことを伝える。運転手から「とにかくバスの中に入れ」と言われる。確かに満席だが交代運転手用の寝台席が空席となっている。そこに座り込む。料金は運転手に直接支払。チケットもない。恐らく彼らの収益・もうけになるのだろう。判断が早い。非常識が常識となる世界。堅苦しく考えると動けなくなる。「何でも有り、だめ元」という意識が身体の中で芽生え始まる・
バスの中に、ラオスの空気はない。メコン川流域のラオスには複数のカジノが中国系資本で経営され、多くの乗客、つまり中国人はそれが目当てだ。バスはカジノから出発する。だから、バス停に入った時はすでに満員の客。チケットがラオス側の公共交通機関でコントロールできないのも理解できる。
わけのわからないままバスを止め。すったもんだの末、とにかく昆明までは行けるという安心感からバスの中でうとうとしはじめた。目が覚めると通路には途中で拾ったラオス地元民乗客が増え,定員オーバーとなっていた。
ラオス・中国国境のボーテンは2020年に開通予定の昆明―ビエンチャン鉄道の工事で数百台のトラックが動き回っており砂ぼこりが舞い,前が見えない。4年前この国境を通過した時の光景とは一変している。建設・土木工事が急ピッチで進み、周辺の作業小屋には「中鉄」の看板とスローガンが至る所に掲げられている。
人口700万のラオス。隣接する雲南省だけでも4700万人の中国。大国から見れば、辺境の一つの県ぐらいにしか思えないだろうな。
ここにあえて高速鉄道を通す価値があるのかと言えば、「一帯一路」を目指す中国のためとしか言いようがない。中国から南海までつなげる目的の一部だ。その入り口となるボーデンは中国の一部と錯覚する状態だ。「債務の罠」がここにも潜んでいるかもしれないし、いずれは本当に中国の租借地になるかもしれない。トンネル、橋でつなぐこのプロジェクトが森林国といわれるラオスの自然環境や住民の土地収用などにどれぐらい影響していると考えると心が重たくなる。
ラオス・中国を「ビザなし」で移動できる日本国パスポートに感謝。夕方、中国側国境の町、モンラーで「ルアンプラバンから来た昆明行きバス席に余裕があるから移動しろ」と運転手に言われ、バスの乗り換え、こんなことも普通は経験しない。
このバスの中で交わされる言葉も中国語、しかし観光客の姿はなかった。男性客が多く、風貌はいかにも労働者風。彼らと直接話すことができなかったが、鉄道建設労働者の移動だろう。2009年、アフリカ、ケニアで中国援助による道路建設現場を見たが、中国製大型機械、そして労働者はすべて中国人だったことを思い出す。ラオスの建設現場でも労働者は中国人だろう。「トンネルを掘って橋を架けられる労働者がラオスにはいない」という言い分もわかるが、現地の住民にとってこの開発はどれほど経済的メリットがあるのだろう。
中国の道路状況は、高速道路。曲がりくねり、陥没が多かったラオスに比べ、雲泥の差だった。ゴム園、バナナプランテーションの景色を見ながら、バスはトンネルや高架整備された道路を高速で飛ばす。ゴミのないパーキングでゆっくり休む余裕もある。ただし、寝台バス。横にはなれるが事故が起きたらどうなるの?と考えると、浅い睡眠にならざるをえない。交通量が多くなり、高層ビルが見え始め、予定通り朝7時に昆明南バスターミナルに到着した。21時間の長丁場だったが、あれこれ振り回され、予想とは異なる旅になり、時間をそんなに長く感じなかった。